30代で社長、そして現役の職人として。

30代で社長、そして現役の職人として。


mutoを支える“手”と“想い”

30代という若さでありながら、会社を率いる社長であり、同時に現場で手を動かし続ける職人でもある。

そのどちらも手放さずにいる理由は何なのか。
そして、その日々の中で見えている景色とは。

mutoの社長に、率直な言葉で語っていただきました。


「プレッシャーの中にある、自由と責任」

「プレッシャーや責任は、やはり大きいです」

まずそう語ったあと、少し間をおいて続けてくれました。

「ただ、自分がしたいと思える方向に事業を進められること、そして、ものづくりとして表現できることは、とてもありがたいことだと感じています」

背負うものは増えた。けれど同時に、“自分で決めて進む”という自由もある。

その両方を受け止めながら、日々の判断を重ねています。


原点は「まず、自分で作ってみる」という姿勢

社長のものづくりの根底には、幼い頃からの教えがあります。

何か欲しいと思ったら、一度自分で作ってみなさい

その言葉をきっかけに、ただ“手に入れる”のではなく、どう作るか”を考える習慣が自然と身についていきました。

さらに、これまで染色以外の工程はすべて自分の手で経験してきたといいます。

糸から製品になるまでの流れを、体感として知っているからこそ、どこか一つでも妥協することができません。

その積み重ねが、今の「徹底したものづくりへの姿勢」につながっています。


不安がなくなることは、きっとない

社長という立場になったときの心境について伺うと

「不安やプレッシャーは、就任前から今に至るまでずっとあります」

という言葉が返ってきました。

事業の方向性、会社の体制、人材のこと、そして産地が抱える課題。
すべてに対して責任を持つ立場である以上、迷いや葛藤は常に隣り合わせです。

それでも前に進める理由は、決して一人ではないから。

「従業員にも恵まれていますし、家族にも相談できます。一歩ずつ進んでいけば大丈夫だと思っています」

その言葉には、等身大の覚悟と、静かな前向きさがありました。


アイデアは、現場で“降りてくる”

今も現場に立ち続ける理由はなぜかを尋ねると、迷いなくこう答えます。

「現場にいると、アイデアが生まれるんです」

実際に手を動かしながら、仲間と話し、試行錯誤する中でふとした瞬間に“ひらめき”が訪れる。

「机に座っているだけでは出てこない感覚があります」

また、現場にいることで工程の無駄や改善点にも自然と気づくことができますし、職人さん達と密に情報交換ができ、自分だけでは気づかなかった機械の仕組みなんかにも気づかせてもらえます。

工場にいるときは自分も職人として従業員さん達と切磋琢磨していると思います。

つまり現場は、単なる作業の場ではなく、ものづくりと経営が交差する場所でもあるのです。


ぶつかることは、むしろ必要なこと

職人としてのこだわりと、経営としての判断。
この2つは、ときに衝突します。

「正直、よくぶつかります」

しかしそれを否定することはありません。

「むしろ、ぶつからないと進歩できないと思っています」

大切なのは、ぶつかったあとにどうするか。

互いの考えを出し合い、納得できる形を探りながら進んでいく。
そのプロセスこそが、より良いものづくりにつながっていきます。


「肌が忘れられなかった」という言葉

これまでで印象に残っている出来事として、こんなエピソードを話してくれました。

一度、購入を見送ったお客様が、後日こう言って戻ってきたそうです。

やっぱり、肌が忘れられなかったんです

その言葉を聞いたときものづくりの価値が、確かな手応えとして返ってきたように感じたといいます。

ただの“商品”ではなく、感覚として記憶に残るものを届けられているかどうか。

その基準が、mutoのものづくりにはあります。


お客様の笑顔が、すべてを教えてくれる

普段は直接お客様の反応を見る機会が少ないからこそ、店頭に立つ時間は特別な意味を持ちます。

「手に取って、笑顔になっていただける瞬間が一番うれしいです」

その一瞬の表情が、何よりの答えになる。

同時に、実際に接することで“mutoに求められている価値”を肌で感じることもできるといいます。

その実感を持ち帰り、またものづくりに活かしていく。
この循環が、ブランドを少しずつ育てていきます。


この場所で働くということ

ものづくりの話から、自然と“”の話へ。


「自分の手で、誰かを笑顔にできる仕事」

この会社で働く魅力について聞くと、とてもシンプルな答えが返ってきました。

「自分たちが作ったもので、お客様を笑顔にできることです」

目の前の作業が、誰かの喜びにつながっている。
その実感を持てることが、この仕事の本質です。

だからこそ職人さん達にもPOPUPの販売に立ってもらいます。

自分で作ったものがどういった反応をされるのか自分で経験して、次のものづくりに活かしてもらいたいなと思っています。



“つくることを楽しめる人たち”が集まっている

現在のスタッフについて尋ねると、「全員が、“ものを創り出す楽しさ”を持っています

という言葉が印象的でした。

「面白いことに皆ぞれぞれ好きなものづくりが違います。DIYが趣味だったり、編み物が得意だったり、細かい作業が好きだったり…。それぞれが自分の好きなものづくりがあるのは面白いなと思います。」

技術や経験以上に、つくることそのものを楽しめるかどうか。

その価値観が、チームの空気をつくっています。


未経験からでも、ものづくりの世界へ

どんな人と働きたいか。

「mutoの商品や考えに惚れた人と働きたいです」

実際に、ほとんどのスタッフが未経験からのスタート。
特別なスキルよりも大切なのは、“関わりたい”という気持ちです。

「つくりたい!やってみたい!という気持ちがあれば大丈夫。器用じゃないから…。と諦めないでください!一緒に成長していきましょう!」

その言葉に、この場所の入り口の広さと、同時に覚悟の必要性も感じられます。


1本の糸から、柔らかな未来を

最後に、これからのブランドについて。

mutoが掲げているのは「1本の糸から紡ぐ柔らかな未来」という理念です。

一本の糸が重なり、やがて布になり、誰かの暮らしにそっと寄り添う存在になる。

「mutoの商品で、皆様の生活を包んでいきたいと思っています」

強く主張するのではなく気づけばそばにあるような存在でありたい。

そんな静かな意思が、この言葉には込められています。


まとめ

社長でありながら、現場に立ち続ける理由。
それは単なるこだわりではなく

ものづくりと、誰かに届けることを切り離さないため。

迷いやプレッシャーを抱えながらも、手を動かし続けるその姿はこのブランドの“温度”そのものです。

そしてその温度は、きっと手に取った人の記憶に、やさしく残っていきます。